南三陸内湾

ゴールといえば真っ先に浮かぶのはサッカー。私はずっとラガーマンでキッカーでしたので、トライの後は精神集中を行い、H型の枠に楕円ボールを蹴り入れるのが役割でした。ちなみにラグビーではゴールしても「はしゃい」ではいけないんです。理由は「紳士のスポーツ」だから。

 

ちょうど一年前、ゴールについてこんな言葉を頂きました。そしてこの言葉は、やんわりじんわりと、今も頭の中を駆け巡っています。

 

『食のゴールは、美味しさですよ♪』

 

これは「コトバの力を磨く勉強会」で先生がおっしゃったコトバ。この言葉を聞いたとき、目の前のモヤがパッと晴れ渡ったのを覚えています。

 

「御社のゴールはなんですか?海産物を通して、どういう未来を描いていますか?」経営者になって、この手の質問を投げかけられる機会が多くなりました。当店がお客様に対して「こうなって欲しい」と思うゴールは何なのか。今日は山内鮮魚店の「目指す場所=ゴール」について、お話します。

 

 

みんな笑顔になることが、山内鮮魚店の「幸せ」

南三陸の漁師

海の幸は、天然も養殖もまぎれもなく「大自然」に委ねられています。天然魚を漁獲する漁師は海そのものと戦い、養殖モノを育てる漁師もまた、自然と格闘しながら一年を過ごします。

 

漁師が水揚げした魚を市場で競り落し、お店でササッとお刺身にして一気に頬張ると、毎回腹の底から「うんまい!」と声が漏れてしまいます。それは、いい仕事してるなぁ、南三陸の海はやっぱり豊かだなぁ、と我々自身が「幸せ」を感じ「笑顔」になる瞬間です。まして苦労して水揚げしてくれた海の幸ならなおのこと。漁師にとって「おいしい!」という言葉は何よりの褒め言葉だそうです。漁師さんの笑顔ってすごくいいんですよ。

 

では当店は何をするのか。それは、魚を吟味し、丁寧にさばき、時に加工し、責任をもってお客様の元へ発送する。それだけです。でも口にしたお客様の食卓には「おいしいね!!幸せだねー♪」そんな会話が生まれる。そうして【漁師のこだわり+鮮魚店のこだわり】がプラスされた海産物は、少しだけ食卓に笑顔の花を咲かせる。鮮魚店にとって、これ以上の幸せがあるのでしょうか。

 

当店も「おいしかった!」と言っていただくのが何よりの喜びです。だから『お客様と生産者と販売店がみんな笑顔になる』これが、山内鮮魚店にとっての「ゴール」なのです。

 

 

キラキラの笑顔も、人を幸せにする

南三陸から50キロ離れた場所で、3つの農法を使い「オーガニック (無農薬)ササニシキ」を育てている友人がいます。先日、彼の元へ行ってきました。とりとめもない要件で伺ったわけですが、話題は自然と育てている「ササニシキ」の話に。この方がいつも目をキラキラさせながら無農薬の製法について語ってくれるんです。

 

『山内さん!無農薬はね、大変なんです。雑草もけっきょくは手で取らないといけない。むかし部活やってたでしょ? めちゃくちゃ走って走って走り過ぎるとまったく動けなくなるでしょ? それと全く同じなんです。家に帰って嫁さんに何か言われてもね、疲労して口もきけないんです。米作りが始まるとね、毎日あの状態になるんですよ(^^)』

 

嬉しそうに身振り手振りで話してくれるその姿を見いてるだけで、ワクワクして幸せな気分になるのはなぜでしょう。結局、あったかコタツに座りながら”自分で食べるためだけに作ってる”という「無農薬の干し芋(これが驚くほど甘い!)」と日本茶をすすりながら、ついつい長居してしまいました(笑)。その後は、キラキラした友人の顔を浮かべながら、帰路につきました。

 

ササニシキは主にお鮨屋さんで使われます。鮨にはササニシキが最も適しているんだそうです。思い返せば子供の頃我々が食べていたのは、あっさりしていて噛むほどに甘みを感じるササニシキでした。

 

それにしても「おいしい食」というのは素晴らしいですね。作る人の笑顔が食品にも満ち溢れている気がします。